タメ口の効果

婚活パーティーで運よくマッチング成立したら、その後お茶に誘ったりするだろう。その際に、「いつのタイミングで敬語からタメ口に変えたらいいの?」問題に直面するはずである。

タメ口は親近感が湧いたり距離を縮めたりするツールとしてはもってこいだが、一方では、いきなりタメ口を使い始めると「敬語が話せない一般常識のない人」や「軽い人」に見られるという諸刃の剣の面がある。

以前、勤めていた会社に一回り離れた年下の中途採用者Sが入ってきた。Sは妙に馴れ馴れしく、相づちを打つかの如く使うフレーズが、「マジっすか?」や「マジで!」だった。

Sは人との距離のつめ方が早すぎる不快指数100%男ではあるが、彼曰く、「マジっすか?」や「マジで!」は敬語として使っているらしいのだ。特に、「マジっすか?」の「っすか」最上級に位置する敬語の1つだと言う。普段、友達と話をしている時は、「パネェ」や「マジパネェ」と置き換えるとのことだった。

いつから「マジっすか?」や「マジで!」が敬語の中に含まれるようになったかはググっても出てこないが、私以外の諸先輩方に対してもSはこのような振る舞いを行なっていた。但し、Sは役職に就いている人に対しては、最上級を上回る特上級の「ハイッ!」や「本当ですか!」を使いこなす「ディス イズ ザ サラリーマン」の鏡のような世渡り上手男だったことはここに記しておきたい。結局、舐められていたんだなー 私達役職なしは・・・。

Sがある昼時に、その日初めて会ったにもかかわらず、挨拶もせずに「うすしおさん 今日のネクタイ イケてないっすねー」と突然言われた時は、食べていたどん兵衛の汁をぶっかけてやろうかと思わせるような無礼さを時々発動するものの、何故か憎めないのである。

Sは実際、男女問わず人気があった。先輩に対してちょいちょい姿を現わす、あの馴れ馴れしいタメ口を使っても許されてしまうキャラクターは、「いったい何故なのか?」を私なりに分析してみた。

Sを思い浮かべると真っ先に思い出すのが、彼の笑顔である。Sは人と話す時、又は人に話しかけられた時は必ず笑顔で接している。Sはお世辞にもイケメンとは言えないが、彼の笑顔には無邪気な子供と接するような人を癒すパワーを持っている。

この笑顔だけでも十分武器なのだが、Sは決して自慢話をしない。それどころか、失敗談を話して笑いをとっている。Sの周りは笑いに包まれていて、自然と人が集まってくる状況を作り出している。

Sのこの振る舞いは社内の人だけでなく社外の人にも如何なく発揮されている。Sが電話越しに社外の人とタメ口を駆使して、楽しくしゃべっている光景を何度も見てきた。そんな楽しい会話を繰り広げた結果、彼の下には次々と合コン話が舞い込んできた。そして、その合コンに出席したいがため、男性社員が益々彼に群がるという不動の人気を得ていた。

因みに、私もSに誘われて合コンに参加したことがあるが、Sのおしゃべり上手なところもあって主役はもちろん彼であり、Sはどう思っているかは分からないが、ただの人数集めで呼ばれた挙げ句、彼を持ち上げなければならないのかと私は感じてしまったので、それ以降の合コンの誘いには頑なに断っていた。今思うとSの人気ぶりに嫉妬して、ちっぽけなプライドを振りかざしていただけだなと思っている。今の私なら、Sの靴を舐めてでも「連れて行って下さい!」と懇願しているに違いない。

タメ口の効果パート2へ続く