ラグビーワールドカップの裏で ロマンス詐欺編

ラグビーワールドカップの裏で出会い編の続き

そこで迎えてくれたのは、Fさん、そしてFさんの可愛い彼女、それから・・・

 

同年代で子供2人を立派に育て上げた風の女性達だった

 

分かっている。歳相応、身分相応だとは重々承知しているが、Fさんの可愛い彼女の知り合いということで、30代の可愛らしい女性がそこにいると勝手に決めつけていた。

1人はあき竹城似のぽっちゃり体型で、もう一人は爆笑問題の太田の嫁、太田光代似のスリム体型という見事なまでに両極端なボディの持ち主だった。

「帰りたい」

これが正直な感情だ。しかし、普段お世話になっているFさんやFさんの彼女が紹介してくれたこともあり、もしかしたら彼女たちのどちらかと予想外にフィーリングが合致するかもしれない、そんな心に思ってもないことを念じながら「帰りたい」という感情を押し殺して笑顔で会釈した。

私が席に着いた時はすでに南アフリカが5点を先制していた。試合が始まる1時間前はガラガラだったと聞いていた居酒屋は、今やパンパンになっていて店内は熱気で渦巻いていた。

合流したグループも当然盛り上がっており、改まって自己紹介なんかしようもんなら「真面目か!」と突っ込まれそうな雰囲気だったので、自己紹介なしにスッと場に馴染めたのは唯一の救いだったかもしれない。

リーチマイケルがボールを持てば、あちらこちらから「リ~チ リ~チ」の大合唱が始まり、日本代表がピンチの時は悲鳴が飛び交い、そのピンチを乗り越えれば大声援が巻き起こるといった具合にみんなで観戦する楽しみを満喫していたところ、白熱した場面になる度にテレビ画面が見えなくなる現象が起こった。

原因は明らかだった。元々私の席からテレビ画面はすごく近く、左ナナメの位置に置いてあった上、テレビ画面のアングルも私と反対の方向を向いていたのでかなり見づらかった。

さらに日本代表がピンチやチャンスの場面が訪れば、私とテレビ画面の間にあき竹城似の女性(以後あき竹城と呼ぶ)が割って入ってきて、身振りや手振りを駆使して応援するもんだからテレビ画面はガードされて完全に見えない状態だった。

だから試合状況はテレビ画面からではなく、あき竹城の豊満なボディから繰り広げられるダイナミックなリアクションで事足りた。

これぞ にわかファン!

そうこうしている間に前半終了、日本3-5南アフリカ。コンバージョンキックを1回決めれば逆転できる点差なので後半に期待しながらハーフタイムに突入した。

日本代表を応援するという目標があったためだろうか、ハーフタイム中は自然な流れで皆と話すことができた。代表選手の推しメンの話や美味しい食べ物屋の話をしたりして、「帰りたい」と思っていた気持ちは何処へやら、いつの間にか楽しんでいた。

後半戦も始まり、応援もさらに熱がこもる中、開始早々南アフリカのペナルティーゴールが決まってしまう。まだ5点差、十分巻き返せる点数だ。と思ったわずか5分後、またまたペナルティーゴールを許してしまう。

さすがに「大丈夫か?」とあちこちからざわつき出したが、若いグループから「にっぽんチャチャチャ」の声援が始まり、一同それに便乗して大きなムーブメントになり、にわかファン達が一つにまとまった。

しかし、そんなにわかファン達の声援とは裏腹に南アフリカの攻撃が加速していく。ペナルティーゴールをもう一つ加えた後、ついに南アフリカのデクラークにトライを決められてしまった。さらにコンバージョンキックも決められ、3-21と大差をつけられた。

静かになるにわかファン。熱しやすくて冷めやすい、これぞ!にわかファンの本領発揮だ。この辺りからにわかファンは各々グループ間で話始めた。あき竹城も例に漏れずリアクションは鳴りを潜め話に没頭している。おかげでテレビ画面は見やすくなったが、試合はほぼ決まってしまったので複雑な気持ちで観戦していた。

引き続き、あき竹城が中心となって会話が繰り広げられていた。しかし、会話している間に気になったのが、太田光代似の女性(以後太田光代)の3分に1度めぐって来る喫煙タイムだった。とにかく吸いまくる。煙も口から鼻からせわしく噴き出している。傍から見ればまるで「機関車トーマス」のようであった。

会話の内容は、あき竹城の「激辛料理へっちゃら自慢」で、どんな辛い食べ物でも辛いと思ったことがないといった、ただの「バカ舌自慢」の話だったり、プライベートでも仲が良い太田光代との旅行話だったりとどうでもいい話をしていたが、話し方や言い回し方、間のとり方などが絶妙で思わず聞き入ってしまった。

肝心な試合はというと、南アフリカがトライを決めてさらに5点を追加し、3-26で南アフリカの勝利で終わった。

衝撃!ロマンス詐欺の話

試合が終了し、続々と店をあとにするにわかファン。「さぁこれで解放される!」と思いきや中々席を立とうとしない我がグループ、会話が益々盛り上がっている。仕方なく早期帰宅を諦め、話の輪に加わった。

その後も話続けて、趣味の話題になった時にそれは起きた。私が「仕事が休みの日は英会話スクールに通ったりしてます」と言ったところ、あき竹城が突然「私、ロマンス詐欺に遭いました」と突拍子もないことを言い出した。

今考えると、あき竹城の頭の中は、英会話⇒外国人⇒ロマンス詐欺に行き着いたのだと思うが、ニュースでしか聞きなれない言葉を急に発したので、私の中ではあき竹城=やべぇ奴と認定してしまった。

しかし、やべぇ奴であろうが何だろうが好奇心をくすぐる「ロマンス詐欺」というワードを聞けば知りたくなるのは当然の性である。

事の発端は、あき竹城のFacebookにある男性が連絡をしてきたことから始まる。彼の名前はカール、アフリカ系アメリカ人でかつて米軍のアーミーに所属していた。Facebookでやり取りを始めた時点では、母親の出身地ナイジェリアで暮らしていた。

カールは最近彼女と別れてしまい、近々日本に行く予定なので日本人のガールフレンドを見つけようとFacebookで探していた所、あき竹城に一目ぼれしてしまい連絡をしてみたと言っていた。

カールがイケメンだったこともあり、あき竹城は興味本位で連絡をとった。すると、その日以来、外国人特有のあまーい言葉が毎日送られてきた。

ただ一つ気になったのが、あき竹城がいつ返信してもカールは必ず5分以内に再び送り返してくる点だった。日本とナイジェリアの時差は日本が8時間早い。あき竹城が昼休みに送ったメッセージを、午前4時にナイジェリアいるはずのカールはすぐさま甘い言葉を添えて返信してくる。

「カールはいつ寝ているんだろうか?」

そんな疑問も恋をしているあき竹城にとって、カールは「鉄人」と言い聞かせていた。

その後も順調にメッセージのやり取りを続けていた数日後、カールからビジネスの話が出てきた。

カールが言うには、ナイジェリアにあるエビの卸会社をすでに買い取っていて、近い将来日本に輸出する予定らしいのだ。それには日本で拠点となる事務所が必要で、エビの卸会社を買った費用がかさみ、事務所を借りる費用が200万円程足りないので貸してほしいと言ってきた。

あき竹城はさすがにそんな大金を貸せるわけもなく無理だと断ると、カールはあっさりディスカウントしてきた。200万円が150万円になり、さらにディスカウントを繰り返して最終的には50万円まで下がった。

それでも貸すのを渋っていると、カールがついに本性を現した。

「なぜ俺を信じないんだ」

「50万円なら貸せるだろ?」

「一生お前を呪ってやる」

などカールは急にオラオラ系に豹変してしまい、ここでは書けない暴言を付け加えて一方的に送りつけ音信不通となってしまった。結局、実質的な被害はなくロマンス詐欺は未遂に終わった。

とても特殊な経験をしたあき竹城だったが、特殊なのは経験ばかりではなくあき竹城本人も特殊であった。さぞかし落ち込んだだろうと思っていると、なんとまだ続きがあったのだ。

その後、あき竹城は何故か「面白い」と思ってしまい、「ロマンス詐欺に騙されるフリをする女」を演じ、それを楽しんでいた。しかも初めのカールから数えると実に3人と連絡をとっていたのだ。

3人とのやり取りでわかったロマンス詐欺の特徴

3人とやり取りをしていたということは、「よっぽど暇な人なんだな」とあなどっちゃいけない。物事を突き詰めようする姿勢、すなわちそれはりっぱな趣味と言えるだろう。いや、趣味を通り越してもはや専門家と言っても差し支えないレベルに達していた。

そんな「ロマンス詐欺」の専門家、あき竹城先生が3人の経験からある共通の特徴があることに気づいた。

その特徴とは

1.元軍人あるいは現役軍人

2.必ず「一目ぼれ」だと言う

3.やり取りが始まると毎日3通以上送って来る

4.いつ連絡しても秒で返ってくる

5.文中「愛してる」の言葉が入っている

6.ラーメン好き

7.近々日本を訪れる予定

8.何か新しいビジネスを立ち上げようとしている

9.新ビジネスの立ち上げ費用不足
 又は母親の手術代不足の費用催促

10.断るとののしられて音信不通

以上、あき竹城先生が経験から導き出した10選である。

真のロマンス詐欺被害者

時刻は22時過ぎ、試合が終了して1時間以上は経っていた。ラグビーの試合の間は飲み放題プランだったが、我がグループは試合後の方がむしろドリンクが進んだように見えた。

飲み放題を全く活かせない飲み方をする大人たちの宴がようやく終わろうとしていた。今回の飲み会は、紹介も兼ねていたので私が全額支払うつもりでいた。

場所は居酒屋で、しかも途中まで飲み放題プランもついていたので5人でMAX2万円前後で収まるだろうと思っていた。しかし、そんな予想をはるかに超える31,200円也。

サーっと血の気が引いたが、Fさんに全額支払うことをすでに伝えていたため、今更「少し出して」とも言えない。横にいたFさんも値段が気になったのか請求書を覗き込んでびっくりしていた。

気を遣ってFさんは「幾らか出しましょか?」と言ってくれたが、「全額支払います」と約束した手前、「大丈夫です」と答えた。

「行きましょうか」という合図で私はレジに向かって歩き、先に支払いを済ませた。心の中では、「女性陣が少しくらい払ってくれるかな」と淡い期待を抱いていたが、女性陣は豪快に笑いながら現れて財布を開ける素振りもなく「今日はご馳走様でした!」と言って下駄箱に向かって去って行った。

この時初めて気づいた。「ロマンス詐欺」に引っ掛かったのは他の誰でもなく、私、うすしおだと。

 

 

 

 

 

 

 

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