昔のパチンコ屋

昨今のパチンコ屋は昔のパチンコ屋と比べてサービスや設備が過剰なように感じる。と言ってもサービスに関して言えば出玉サービスのことではなく、人的サービスのことである。

低貸遊技機(1円パチンコ台)のあるパチンコ店は大概1台1台に出玉自動計測機(パーソナルPCシステム)が設置されており、出玉はカードに記録されているのでドル箱もなくひいては店員を呼ぶことさえなく換金することができるので非常に便利である。

その他にも休憩所が設けられていたり、そこにはテレビや雑誌、マッサージ機や自販機などが設置されている。あまりにも快適な空間のため、パチンコ目的以外で来た人がヌシのように陣取ったりしている店もある。

一方で4円パチンコの場合はどれだけ出ているかの出玉の演出が必要なため、あえて出玉自動計測機を使わず以前と同じようにドル箱を積んで射幸心をあおっている店舗が増えてきているらしい。

もちろんジェットカウンターにドル箱を運んでレシートを出してくれるまでは店員がやってくれる。その際に、お客の必要・不必要の意思は関係なく,ふうが開いたおしぼりの提供がなされる。これはサービスの押し売りのような気もしないでもないのだが。

サービスも設備も申し分ない今のパチンコ屋だが、どこのパチンコ屋も代わり映えしない。個性がないのだ。昔のパチンコ屋は良きも悪きも味があった。当時のパチンコ屋の店員の7割方がパンチパーマだった。それがあたかも男性店員のオフィシャルヘアースタイルかのように流行っていた。残りの店員は角刈りか丸刈りで占められていた。

ほぼ全員が客に対してタメ口で、両替機の上にはマイたばことジュースが置いてあった。だいたい15分置きに両替機前に戻ってきて、たばこで一服しジュースでのどを潤す夢のローテーションが繰り広げられた。

当時の店員の仕事はというと、今とは違いドル箱を運ぶようなことはしない。大当たりすれば呼び出しボタンを押し、店員はやって来るが空箱だけ渡してそのまま去っていく。玉でいっぱいになった箱と空箱を交換するのは客の仕事である。その際は一旦ハンドルを放して自分で交換する。

ドル箱をジェットカウンターに持っていくのもジェットカウンターに玉を流すのも全部自分でしなければならない。その他の仕事は玉詰まりの補修やメダルの補給、そしてメインは客が悪さしないかの監視だった。

今のパチンコ台やパチスロ台は当たり前のようにプッシュボタンが付いていて、少々荒く叩いても文句は言われないが、昔の台はそんなボタンなどは付いていない。台を叩いたり揺らしたりしようものならパンチパーマ店員の監視センサーが働いて物凄い形相でやって来る。さらにどこからともなくパンチパーマ店員が集まってきて、その様子はまるで魚群ならぬパンチ群である。

そして台を叩いた客は強制的に引きずられて事務所に連行されるのである。数分後、お察しの通りボクサーの試合後みたいな顔が変形した客が事務所から飛び出してくるのは言うまでもない。

どこの世界でも悪い人がいれば良い人もいる。もちろんパンチパーマ店員にも良い人はいる。当時は年齢に関して寛容な店員が多く、高校時代、ませていた友人に連れられて恐る恐るパチンコ屋に入店したことがあった。当然、パンチパーマ店員に見つかり声をかけられた。

「おにいちゃん 学生さんやろ?パチンコしてもええけど5時までにしといてな!警察が見回りに来るかもしれんから」

滅茶苦茶怒られると覚悟していたので予想外の言葉が返ってきた。そのパンチパーマ店員の粋な言葉のおかげで現在もパチンコにどっぷりハマっております。ありがとうパンチおやじ!

そんな個性のある店員がいた昔のパチンコ屋だが客とて負けてはいない。昔のパチンコ屋にはタバコの煙でモクモクの中、平気で小さい子を連れて来る客がいた。

その子供の役割は落ちているパチンコ玉を集めさせて、その玉を親が打っている台に補充させたり、その玉をカウンターに持っていってジュースに交換したり、または親の横でパチンコを打っていたりしていた。

恐ろしいパンチ店員の方は見て見ぬふり、優しいパンチ店員の方は「〇〇ちゃん 今日はいくつ拾ったの?」と穏やかに訊いてくる。そんなおいしいことがあったため、親はこぞって子供をパチンコ屋に連れて行った。

その他にも平気で床にタンは吐くし、上級者になるとサッカー選手なみに手鼻をかむ強者もいた。だから床に物を置くことは便器の横に置くのと同じくらいに汚かった。

なかでも一番驚いたのは私のとなりの台をキープしていたオヤジが帰ってきて、イスに座るなりワンカップを開け、買い物袋から買ってきたカレーライスを取り出しおもむろに食べ飲み始めた。オヤジからか、はたまた食べ物からか分からないが、色々な加齢臭が漂ってきて我慢できずに席を立った思い出がある。

そんな良くも悪くも個性が強かった昔のパチンコ屋を思い出すともう一度あの頃に戻りたいなと思う今日この頃である。