1人ぼっち

私の友人の8割近くは家族を持っている。40代のおっさんの友人となると至極当然のことだが、個人的には悲しいのである。それはやはり簡単に友人を誘って遊びに行けないからだ。したがって、自然と一人で行ける所に限られてくる。

外食に関してもそれは顕著で、子洒落たイタリアンやフレンチ、焼肉店や1500円を超える和食店、ファミレスなども私にとってはハードルが高く、一人でも入りやすいラーメン屋、牛丼屋、うどん屋、定食屋、中華屋などに向かってしまう。

一度、どうしてもびっくりドンキーのチーズパケットディッシュが食べたくなって一人で訪れたことがあった。店内に入るとカップルや家族連れで賑わっていた。

そして注文を終えてホッとしていたところ、前方に目を向けると子連れファミリーが座っていた。するとその家族の息子だと思われる5歳くらいの男の子が近くにあった柱を利用してくるっと180度回り始めた。

男の子が180度回るたびに私と目が合う。私が一人で食事しているところを見て、その男の子は「可哀想で哀れなおっさんだな」と見えたので、和ましてあげようと思ったのであろうか?何度も何度も回転し始めた。初めの内は、私も苦笑いとも愛想笑いともとれるほほ笑みを返していたのだが、如何せん相手は5歳ほどの男の子、しつこさは群を抜いている。もし彼が単純作業を気に入り、その作業に没頭すれば、時給1600円は軽く超えてくるであろう集中力である。

彼の両親はというと、おしゃべりに夢中になって男の子のことはすっかり忘れている感じに見えた。それをいい事に男の子は勢いを増し、もはや「ワン・エイティー」というワザに見えてくるほど回転を究めていた。流石の私もここでほほ笑み返しをすると調子に乗ってしまうと思い、自分の携帯に目を向けることにした。

相変わらず、男の子は高速スピンを繰り返していた。ここでようやく母親が気づいて、男の子に食事をするように促した。男の子は観念したかのように自分の席に方向を変え、食事を始めた。

しばらくして、私の席にも注文したチーズパケットディッシュが運ばれた。久しぶりのチーズパケットディッシュを堪能していると、再び悪魔が牙をむいた。食事を終えたのかまた男の子がスピンし始めたのだ。私は完全無視を決めて食事を楽しんでいたのだが、敵はその上をいく。

私が一向に振り向いてくれないと察知すると、注目してと言わんばかりにスピンしながら和田アキ子ばりの「ハッ」「ハッ」「ハッ」と騒ぎだしたのである。

流石に母親がすぐに気づいて止めさせたのだが、「次に何が始まるか分からない」と恐怖さえ感じ始めた。私は「シチューは飲み物」と信じて疑わなかった時代を思い出したようにチーズパケットディッシュをかき込んでそそくさと店を後にした。

そんなトラウマ経験があるため、一人でファミレスに行けない体になってしまった。ここでひとつ提案があるのだが、ラーメン屋「一蘭」のようにどの飲食店にも味集中カウンターを設置する義務があると法律で決めてほしい。そうすれば一人でも焼肉店やイタリアンにも行けるようになるだろう。ぜひとも一人で気楽に入れる飲食店がどんどん増えてくれることを願っている。